投稿日:2025.07.15

ヒアルロン酸は熱で溶ける?併用治療のリスクや術後の注意点

「ヒアルロン酸は熱で溶けると聞いたのですが、注意点はありますか?」

「術後にお風呂やサウナ、他の美容治療を利用すると、ヒアルロン酸の効果が失われることはありますか?」

ヒアルロン酸注入を受けた患者様から、このようなご相談をいただくことがあります。

この記事では、ヒアルロン酸が熱で溶けるかどうかをはじめ、ヒアルロン酸注入後に避けた方が良い行動や、熱を利用したタイトニング治療との併用について、ヒアルロン酸注入専門クリニックの立場から解説します。

ヒアルロン酸は熱で溶ける?

結論から言えば、ヒアルロン酸が熱で溶けることはありません。

ヒアルロン酸は体内にもともと存在する成分で、酵素(ヒアルロニダーゼ)によって分解・吸収される性質があります。クリニックでも、ヒアルロン酸を分解するときは、ヒアルロニダーゼを利用します。

注入治療のなかで熱に弱い性質を持つのは、ボツリヌストキシン注射です。ヒアルロン酸注入のみであれば熱で溶ける心配はありませんが、ボツリヌストキシン注射と併用する際は、注意しましょう。

「ヒアルロン酸が熱で溶ける」と言われる理由

では、なぜ「ヒアルロン酸は熱で溶ける」と言われるのでしょうか?

これは、温かくなり皮膚や組織の代謝が高まると、ヒアルロン酸の分解や吸収が促進される可能性があるためです。

また、RFやHIFUなどの機器による熱エネルギーが、ヒアルロン酸製剤の物理的・化学的構造に影響を与え、分解を促進する可能性があります。

ほかにも、局所的な炎症反応や酵素活性の増加によって、製剤の分解が加速されることもあります。

このような理由から、「熱で溶ける」と誤解されることがあるのです。

具体的に解説します。

ヒアルロン酸の注入層に関わらず熱エネルギーが到達する可能性

ヒアルロン酸を注入する深さは、施術の目的によって異なります。

浅いシワの改善には表皮付近に、たるみの改善には骨膜上などの深層に注入されることが一般的です。

一方、HIFUなどの熱エネルギーを用いた機器は、機種や出力設定によっては熱エネルギーが深部にまで作用し、骨膜上に到達することもあります。

したがって、皮下はもちろん、注入部位が深層であっても熱の影響をまったく受けないとは限りません。

タイトニング治療の熱エネルギーは真皮~筋膜まで届く・作用する

タイトニング治療は、機種による違いはありますが、真皮層や筋膜層まで熱エネルギーを届ける治療法です。

ヒアルロン酸注入の層と完全に一致することは稀ですが、エネルギーが周囲に伝わるため、影響がゼロとは言い切れません。

ヒアルロン酸注入とタイトニング治療の併用効果

ヒアルロン酸と他の治療を併用すると、「わずかでも熱で溶けるかもしれない」という懸念が残るかもしれません。

しかし、適切な順番で併用することで、高い相乗効果が期待できます。

ヒアルロン酸と熱エネルギーを利用したタイトニング治療との併用について解説します。

ヒアルロン酸注入後のHIFUの影響

HIFUとは、高密度焦点式超音波(High Intensity Focused Ultrasound)の略です。

肌に高密度の超音波を照射することで、肌を引き締めます。

なお、超音波は体内に吸収されて減衰する過程で、熱に変換されます。

HIFUは熱によるダメージを表皮には与えず深い層にのみ作用するため、ヒアルロン酸を表皮に注入した場合でも、大きな影響はないと考えられています。

ただし、注入層に近接してHIFUを照射した場合、ヒアルロン酸製剤への間接的な影響が報告されています。

実際、HIFU施術後に短期間でヒアルロン酸を注入したところ、効果の実感が乏しかったというケースもあるため、施術間隔には注意が必要です。

そのため、HIFU後にヒアルロン酸注入を行う際は、2週間程度の間隔を空けることが推奨されます。

ヒアルロン酸後のRF(高周波)の影響

RF(Radio Frequency ラジオ波)は高周波の一種で、電磁波を熱に変換させることで、コラーゲンやエラスチンの生成を促す効果を期待した治療です。

代表的な機器として、サーマジェン、デンシティ、イントラジェン、インモードが知られています。

肌内部に熱が発生すると新陳代謝が促され、ヒアルロン酸の吸収が早まる可能性があります。

実際、ヒアルロン酸注入直後にRFを施術したところ、約35%の症例で製剤が減少したという報告があります(引用元:Jurairattanaporn et al., 2023)

そのため、ヒアルロン酸製剤を安定させるには、RFを先に行い、その後に注入する順序が安全とされています。

施術を併用する場合の推奨期間は、RF施術後に2週間程度の間隔を空けることです。

ヒアルロン酸注入後のポテンツァの影響

ポテンツァやシルファームXは、ニードルRF治療器です。

針先からRFを真皮層に届けるほか、極細針で肌に小さな穴を開けることで肌のターンオーバーを促進したり、目的に応じた薬剤を導入したりすることもできます。

RFの熱により新陳代謝が上がるとヒアルロン酸の吸収を促進させる可能性があるため、やはり2週間~1ヶ月の間隔を空けることをおすすめします。

ヒアルロン酸と他の治療を併用するときの順番

では、ヒアルロン酸と他の治療、特に熱エネルギーを使ったタイトニング治療を併用したい場合、どのような順番で受けるのが良いでしょうか。

一般的な目安として、以下の2点を考慮していただくとよいでしょう。

タイトニング治療を先に行う場合

施術直後にヒアルロン酸を注入すると、製剤が減少したとする報告があります。

少なくとも2週間以上の間隔を空けることが安全です。

ヒアルロン酸注入を先に行う場合

注入後すぐにタイトニング治療を行うと、熱エネルギーの影響を受ける可能性があるため、こちらも2週間程度の間隔を設けるのが望ましいでしょう。

いずれの場合でも、2週間程度の間隔を空けることが推奨されます。

ヒアルロン酸注入の仕上がりは、全体のバランスが重要です。

ヒアルロン酸注入後に熱エネルギーを利用した施術を受けると、タイトニングによってせっかく完成したバランスが崩れることで、ヒアルロン酸の効果が失われたように感じられることがあります。

そのため、ヒアルロン酸注入後にタイトニング治療を受ける場合は、少なくとも2週間は間隔を空けることをおすすめします。

ただし、症状や骨格、肌のコンディションには個人差があるため、最終的にはクリニックでカウンセリングを受けて、医師と相談して決定しましょう。

ヒアルロン酸注入後に避けるべき行為

ヒアルロン酸が熱で溶けることはなくとも、良い状態を維持するには注入後の過ごし方が重要です。

術後に避けたほうがよい行動について解説します。

サウナ・岩盤浴・入浴・血行が良くなる行為を避ける

温熱により血流が促されると、ヒアルロン酸の吸収を早める可能性があります。

次のような行為は、1週間程度控えましょう。

  • サウナ、岩盤浴
  • 長時間の入浴や高温のお風呂
  • 激しい運動や飲酒

マッサージなどの圧迫をさける

ヒアルロン酸は注入後すぐには完全に安定していないため、変形を避けるため1ヶ月程度は強い圧迫を避けてください。

例えば、以下のような行為を控えましょう。

  • エステやマッサージ
  • うつぶせ寝(枕の圧迫)

家庭用美顔器の使用を避ける

超音波やRFの家庭用美顔器は、ヒアルロン酸の吸収を促進する可能性がゼロとは言い切れません。

また、誤った使用法や圧迫を加えることで変形につながるリスクもあります。

詳しくは医師にご相談ください。

ヒアルロン酸を長持ちさせるために

ヒアルロン酸の効果を長く持続させるためには、注入後の過ごし方に気を付けることが大切です。

熱で溶けることはありませんが、代謝を促す行為は控えましょう。

また、安全性が高く質の良いヒアルロン酸製剤を選ぶこと、信頼できるクリニックや経験豊富な医師を選ぶことも重要になります。

さらに、定期的なメンテナンスを受けることで、自然で美しい仕上がりをより長く維持することができるでしょう。

ヒアルロン酸注入ならフィラークリニック

ヒアルロン酸注入後に良い状態を維持するには、治療計画や術後の過ごし方が重要です。

フィラークリニックはヒアルロン酸注入専門クリニックです。

専門的な知識と豊富な実績をもとに、特徴の異なる豊富な製剤を用い、術後の変化も想定し、患者様に最適な完全オーダーメイドの施術プランを提案しています。

ヒアルロン酸だけでの治療はもちろん、「他の治療との併用を考えている」という方もお気軽にご相談ください。

監修医

福岡院院長 笠 智就
フィラークリニック 福岡院院長
笠 智就

香川大学医学部卒業後、整形外科・大手美容外科を経て、
2023年10月よりフィラークリニック福岡院の院長を務めております。
月間200症例以上のヒアルロン酸注入を行っており、
クマ取りをはじめトータルアンチエイジングを得意としています。
自然に、でもしっかり効果を出すために、
解剖学的な知識を元に「どう入れるか」にとことんこだわった治療を行っています。

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